序章6

ちょっとした不注意で起こった自転車の転倒、そして骨折。でも、今でも不注意ではないと思っている。よそ見をしていた訳でもないし、時間に余裕がなくて急いでいた訳でもない。いつもの電車にいつものように乗ろうとしていただけ。この日だけ車が走っていた訳でもない。いつもの日常。朝方までの雨で路面が濡れていたけど、こんなことも普通にあることだ。やっぱり日常。ただ、この日は、前から来た車を避けようとハンドルを右に向けたら、タイヤが滑って、自転車がひっくり返った。それが事実。そして、そのまま身体が地面に叩きつけられただけ。そして骨折していた。それも事実。私はいつもの日常をいつものルーティンで過ごそうとしただけ。事実を認めると見えることがある。ただひとつだけ、日常ではなかったことがあった。Bマラソンのエントリーを前日の夜にしたということ。ついにやったという満足感、高揚感。驕りという気持ちの非日常は確かにあった。入院生活も一週間が過ぎるまでは緊張感があった。ここで自分がどういう生活を過ごすかということに見通しがもてない。そして、自分の身体がどうなっていくのかもわからない。だけど、一週間が過ぎる頃から

、自分を責めだした。ベットの上で何度も自分の驕りの気持ちを責めていたその一方で自分以外への腹立たしさ、八つ当たり。そして自分の中の投げやりさもでてきた。何でこの仕事が進んでいない。ここまでは、いつまでにできていなければいけない。ここまでやってきたことが白紙になってる。松葉杖の使い方なんかに時間を使いたくない。そんな訓練なんか、教えてもらわなくてもできる。やって欲しいことは早く歩けるようになる方法。責任転嫁と自分の不甲斐なさへの絶望感。トンネルの中、よくある言葉だけど、まさに私にはぴったりだと思っていた。今でも、ときどきそうなることがある。自分を守ろうとすることが。理由を自分以外に求めたい。自分を正当化する方法を探そう。自分を美化する。

でも、いったい、いつまでそんなことを続ける気なのか。メガネ、ウオッチ。いつだって原因は自分の気持ちにある、思い出せ自分。それでも迷惑をかけることがある。